こくえい不動産調査

調査コラム

調査コラム10

●その一戸建は、本当に一戸建か?(3/1/2009)

少し前の話になりますが、都内某所で、木造の新築戸建の分譲販売がありました。4棟の建物が南道路に 面して並び、駅からも徒歩5分で、新宿までは電車で15分ほどとアクセスもよく、住居系の用途地域に立 地し、住環境もよい物件です。少々土地面積が小さく、小ぶりな建物ですが、価格も周辺相場と比較して むしろ割安かな、と思える水準で早晩完売になると思われました。

ところが、なぜか売れません。

新築戸建の分譲は、建物建築中の段階から販売ができます(建築確認の取得以降であれば、現地が未だ更 地の状態であったとしても、「新築戸建」として分譲販売ができます)。ほどなく建物が完成し、足場が 外れてみると、なんだかちょっと違和感があります。

建物の隣同士が、やけにくっついて建っているのです。

調査コラム10写真 その場所は、建ぺい率が60%、容積率は150%で、準防火地域に指定されていました。建ぺい率が60%と は、敷地面積に対して、建物の建築面積の割合が60%ということです。

一方で、民法第234条第1項で、「建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保た なければならない」と規定されています。隣地の建物同士がお互いに50p以上離れるわけですから、理論 的には建物の間隔は1m以上離れるのが普通です。

これが、例えば商業地域のようなところで、建ぺい率が80%に指定されており、かつ防火地域内の耐火建 築物であれば、建ぺい率制限がなくなります(=100%まで建築可)ので、隣地建物とくっついて(隙間 なく)建築することも可能です(実際、商業地域ではよく見ることができますね)。

しかし、この新築戸建は住居地域に建築されています。

そこで、役所で建築確認関係を調査してみると、なんと「連棟式建物(長屋)」として建築確認を取得し ていました。4棟が「長屋形式の一棟の建物」として、建築されていることになります。

しかし、現実には建物は「離れて」います。どう見ても、4棟の分譲住宅です。 こうなると実際問題として、この建物にはどんな問題が生じてくるのでしょうか?

  1. 建築確認の「検査済証」(適法に建物が建築されたお墨付き)の交付が受けられない。また、住宅性能 評価制度などの利用もできない。
     (というか、建築確認申請と違う建物を建ててますから、違法建築ですよね!←是正命令の可能性!)
  2. この建物を購入しようとする場合、金融機関からの融資が受けづらくなる。
     (一般的に、連棟式建物の融資審査は厳しく、融資掛け目が悪い。金融機関によっては、取扱いがない。 それ以前に、違法建築の新築建物に融資することは、コンプライアンス上の問題から取り扱わない金融機 関がほとんど。)
  3. 建物を建て替える時に、(4棟のうちの1棟だけの)単独建て替えが事実上不可能。
     (他の所有者の同意が必ず必要となるため)
  4. 民法第234条第2項では、「前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、 その建築を中止させ、または変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又は その建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる」とありますが、つまりこの場合、建築 主=分譲主に対して、隣地空間の確保がなされていないという瑕疵を根拠に、「損害賠償の請求」をするこ とができる可能性が内在することになる?

それにしても、どうしてこのような「偽装確認申請?」となったんでしょうねぇ。少しでもコストを抑えた かったのか、それともそうしなきゃならないような「特殊な事情」があったのか…。真相は不明です。

不動産の広告基準において、新築建物の分譲広告では、建築確認番号を明示しなければなりません(普通は、 物件概要に記載されていますね)。複数棟の建物分譲であれば、「建築確認:○○○○他」と一部省略して 明記もできます。一般の方が、建物の建築確認を調べるということはありませんので、売主自らや、仲介と して取引をサポートするプロの方が調べるわけですね。きちんと調べないと…

現実の建物と役所に出した書類が違う。思わぬところで「落とし穴」がありますので、プロの方も気をつけ て下さい!

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