こくえい不動産調査

調査コラム

調査コラム13

●手付金の問題 あれこれ(3/6/2010)

調査コラム8でも少し触れたのですが、「手付金」の取扱について、不動産業者さんからのご質問や問い合わせがいくつか寄せられていますので、ここであらためて整理してみたいと思います。

まず「手付」ですが、民法557条に規定があります。

  1. 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
    (いわゆる「手付放棄・倍返し」の規定)
  2. 第545条第3項の規定は、前項の場合には適用しない。
    (第545条第3項:(解除の効果)解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない)

次に「手付金」ですが、ヤフー不動産の説明によれば、「売買契約のときに買主から売主に支払われるお金。代金の1〜2割が一般的。単なる代金の前払いとは違い、特別な意味を持つ。手付金には、証約手付、違約手付、解約手付という3つの性格があり、特に定めがない場合や売主が不動産会社などの宅建業者の場合には解約手付とみなされる(民法557条)。」とあります。

さて、手付金にまつわる話として多いのが、次のような場合ですね。

  1. 購入希望の顧客がいるが、すぐに用意できる手付金は10万円しかない。契約をなるべく早く締結してもらうために、手付金を10万円としてもよいか?(少額手付金)
  2. 手付金の分割受領(契約締結時の日曜日に10万円、翌日の月曜日に90万円支払い、合計で100万円を手付金としてもよいか?(手付金の分割受領)
  3. 契約当事者が同意すれば、手付金なしの契約ができるか?
調査コラム13写真1

まず、1.の少額手付金ですが、不動産の売買契約における手付金の額について、一般的には売買代金の5〜20%前後かつ、最低でも50〜100万円以上であることが多いですが、原則として売主・買主の双方が同意すれば、自由にその金額を決めることができます(但し、宅地建物取引業者が売主である場合は、売買代金の20%以内:宅地建物取引業法第39条)。

しかし、10万円という少額な手付金により契約する動機が、仲介業者(または売主業者)が契約を急がせるためである場合には、宅地建物取引業法第47条第3項で禁止されている「契約の締結を誘引する行為」に該当する恐れがあります。

この誘引行為があったかどうかについては、あくまで実態で判断されるため、当事者側からの都合で少額手付金で契約する行為自体は禁止されていませんが、もし契約締結誘引行為と判断されると、仲介業者(または売主業者)は行政から1年以内の業務停止、もしくは免許取消処分を受ける場合があるとともに、6ヶ月以下の懲役もしくは20万円以下の罰金という刑事罰も課せられる可能性があります。

もちろん、少額手付金である以上、契約当事者は契約を解除しやすくなるので、契約自体が「軽い(=契約の効力が弱い)」ものになってしまうリスクもあるので、充分な説明と注意が欠かせませんね。

次に、2.の手付金の分割受領ですが、契約締結時に支払う金銭と、後日支払う金銭を合せて「手付金」とすることは、宅地建物取引業法第47条第3号および行政通達で禁止されている「手付金の分割受領」に該当することとなるため、1.と同様に行政処分として1年以内の業務停止もしくは免許停止、刑事処分として6ヶ月以内の懲役もしくは20万円以下の罰金の可能性があります。

調査コラム13写真2 また、手付契約は要物契約であることから、このような手付金の授受の場合、買主は10万円を放棄すれば手付解除できるのか、それとも残りの190万円を支払わなければ手付解除できないのか疑義が生じます。そもそも、このような疑義が生じる可能性が高い取引方法自体、宅地建物取引業法第65条第1項に定める「取引の関係者に損害を与えたとき、又は損害を与える恐れが大きいとき」に該当する可能性があります。

ちなみに、翌日支払う金銭を「手付金」ではなく「内金」とした場合はどうなるか? ですが、手付金と内金ではその法的な性格は異なりますが、実質的には手付金の分割払いと代わらない意図であることが、容易に想像できますし、そもそも1.で触れた契約締結誘引行為とも考えられるため、やはり止めておいたほうがよいかと思われます。

3.の手付金なしの契約ですが、理論上は可能です。
しかし、手付金がない以上手付解除はありません。ということは、相手方に契約違反がある場合等を除いて契約を解除することはできないことになります。つまり、契約当事者が何らかの事情で契約を解除しようと思っても手付解除できないわけですから、考えられることとしては「違約金支払による解除」ということになります。

しかしながら、違約金条項がある場合でも、違約金を払えば一方的に契約解除できるというものではなく、違約した者の相手方が解除をしたうえで違約金を請求できるものであり、その相手方は契約を解除しないで履行を求める=強制執行も、理論上は可能です。プロの仲介業者が仲介する契約行為としては、お勧めできる契約形態ではないですね。

1.〜3.のいずれの契約形態についても、大きな問題が内在しています。ご注意下さい!



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